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[戻][体験談]羊羹に侵食された開発
イチローなんてたいしたことはない。
アリゾナ州ピオリアのマリナーズ・キャンプ地にて。
イチローの囲み取材を終え記者席に戻ろうとすると関係者に呼び止められた。
「これイチローから」
手渡されたのは青い袋だった。
「・・・・・」訳も分からず、中をのぞいた。イチローのスパイクだった。シルバーのペンでサインも入っていた。
「??」
「お祝いだって」
聞けば、記者がオフに結婚したと知ったイチローに頼まれたという。
取材記者が選手にサインをもらうのは禁じられている。
それを配慮して関係者に託したのだった。
メジャー一年目からずっとイチローを追い続けてきた。
しかし、思い出すのは”苦い経験”ばかり。取材では、記者の質問が”無視”されたり、いなされたことは10度や20度ではない。
その光景は夢に出てくるほどだった。”あの”イチローが・・・。気が付けば、涙をぬぐっている自分がいた。
プレゼントがうれしかったのではない。気持ちがうれしかった。
お礼を言いたくてロッカーへ行った。すでに出た後だったが、まだイチローの甘い香水の匂いが残っていた。
駐車場に走った。金網越しにファンにサインするイチローがいた。
「ありがとうございました」と言うと、イチローは「へへへ」と照れたように笑って「おめでとうございました」と言った。
そんないけ好かないマイペース野郎、それがイチロー。
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