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その後裕美は治療してもらうために病院へ通うのだが、転職したばかりで有給もないため平日一日おきに仕事終わりに通い、週末は入院と言う変則的な通院治療をしていた。

俺も彼女とのデートなどもあり、毎回会う事などできるわけもなかったのだが、それ以来裕美からは結構頻繁にメールが来るようになった。

何度も飯をおごってやったんだが、その代り、裕美のアパートへ行ってSEXしていた。

と言ってもそれも病院へ行かない日の中の2〜3日に1度くらいで、俺にとってはS.F.程度のものだった。

そのうち風邪をこじらせた、と連絡があり、会いたいと言われたが、俺はその日は別の出会い系でアポを取った女と会う約束をしていたから、返信をしていなかった。

しかしその女と別れた後、携帯には裕美からのメールが20通以上着いていた。

どういう女なんだ!とかなり怒り気味の俺に対し、裕美のメールはとにかく連絡がほしい、会えなくても連絡はしてほしい、嫌いにならないで...等々弱気なメールが着ていた。

俺はとりあえず金を返してもらうまでは縁を切るつもりはなかったので、返信する。

すると嬉しそうな返事を送ってくる、俺はうざくなってもう寝るから、と言って返事を打ち切った。

ある日、いつものように飯食ってから裕美のアパートでSEXをした後、何気にテレビを見ていたら音楽番組が始まっていた。

『今度一緒にカラオケとか行きたいなぁ。』

裕美が言い出した。

俺は適当にうなずきながら確約はしなかったんだが、裕美はそれでも一人で盛り上がっていた。
あんな歌が歌える、とか、こういった歌は苦手、とかどうやら裕美の中では金だけのつながりではなく、恋人に近い存在になりつつあるように感じたが、俺から特に何を言うでもなく、流して聞いていた。

そんな裕美とメールしているときに、また金の無心のメールが届いた。

しかも今度は30万。

俺は呆れてもう返信せず、ほったらかし。

それでも裕美は返事だけでも・・・と送ってくる。

仕方なく、そんな金はない!ときっぱり断る。

文章にこそしなかったものの、また援助で稼げば?くらいの気持ちでいた。

そうだよね、ごめんね、とのメールの後、メールは途絶えた。

二日後、一応前回に会う約束をしていた日だったが、俺は会うつもりはなかった。

昼過ぎに裕美からメールが来る、今日は何時ごろ会えるかな?と。

金の話はもう出てこない、何とかなったのか、とりあえず夕方からなら、と返事をする。

夕方、裕美のアパートへ行く、いつものように飯を食ってからSEXになるのか、と思ったが飯の後裕美から、お金のことなんだけど・・・と切り出してきた。

俺はいくらなんでも早々貸せる金額じゃなし、身分を証明したぐらいでは信用できないしと言って断った。

すると裕美はしばらく沈黙した後

『実はね、治療費って言うのは本当なんだけど、その、治療とは別に、中絶の費用も要るの』

俺は一瞬固まった、中絶?何?何で?

『通院してるときにね、先生に言われたんだけど、病状がいつもと違うから、念のためって見てもらったらお腹の中に子供がいるって言われて』

そう聞いても俺は何も言えない。
事態が飲み込めないと言うか、信用できないと言うか。

『写真も撮ってもらったの、これなんだけど』

そういってレントゲン写真みたいなのを見せられる。

言われればそうかな?ぐらいの小さい塊が写っている。

『でもね、こういった出会いだし、できたからって結婚できるわけでもないし』

『私ね、昔病院であなたは不妊症の気があるわよって言われてて、それで安全日ならまず大丈夫だと思って、それで中でいいよって言ってたの』

『最初に会ったときね、私親の借金の保証人になってて、その親が雲隠れしちゃって自分の娘捨てるなんてひどい親だよね、でもね、お金は返さないといけなかったからどうでもいいやって思って、それであんな募集したの』

『前の会社はいじめられてやめたから、誰も頼れないし、友達もほとんど地元にしかいないから』

『親の借金の件があるからアコムとかも貸してもらえないし』

次々に話し始める裕美。
それを聞いている俺は、しかし、どこ吹く風だった。

俺の子なのか?俺の子を堕胎すのか。

そして鬼畜な考えも浮かぶ、妊娠してるのなら安心して中出しできるよな・・・

しかし、ま、考えてもしょうがない。俺が中出ししていたのは事実。
他の男の子供だったとしても堕胎すなり、産むなりしてからでないと調べようもないし。

とりあえず当座30万のうち12万は裕美の給料があるらしいが、それを全部つぎ込むわけにはいかない。

家賃や携帯代、食費を考えれば3万がやっとのこと。

残り27万はなんともならないらしい。

しかし俺にとっても27万と言えばすぐに用意できるわけもない。

俺の預金は10万を切るかきらないかぐらい。

時間も時間だ。俺の友達に当たろうにも、それだけの金を集めるとしたら何人回ればいいのか。

ATMが開いている時間のうちに回りきれるのか、そんなことを考えていた。

結局俺は口座から出せる分をすべて出し、黄色い看板で借りることにした。

もともと旅行先などでの急な出費用にカードは作ってあった。

裕美にはカードを作って借りるから、と言い、一緒に行くものの、俺は中で適当に時間をつぶしてから金を引き出し、18万を借り入れ、銀行の引き出し分と合わせて27万を揃えた。

しかしこの時の俺は、子供を堕胎すことに対する感情よりも、どうやってこの金を返すか、ばかりを考えていた。

金はない事もないが、18万と言えば俺の手取りまでは行かないものの、月の収支で言えば5万ぐらいが返せる限度だからだ。

一度裕美の部屋に戻り、いろいろ話をしていたが、裕美は俺がそこまでしてくれたからだろう。

嬉しさに笑顔を見せていたが、俺は金の出所を探していた。

口ぶりからして裕美はこの日から付き合いが始まった。

事情が事情だから産めないけど、彼氏の子供を堕胎すんだ、といった感じの口ぶりで話をしていた。

翌日裕美はお金を支払い、3日後に手術の予約を入れてきたと知らせてきた。

俺はメールでは気を遣った言い方をするものの、本心では何の感情もない、冷徹なやつになっていた。

3日後、裕美の手術の日だ、その日の昼過ぎから始まるらしい。

平日だから俺は普通に仕事に出かけた。

仕事中、裕美から『今から行ってくるね』のメールはあった、病院はいつも行く病院だ。

唯一の今の友達はここの病院の看護婦らしい。

しかしそれに返信するとき以外、大して気にも留めていない俺がいた。

普通に客先へ言って『この新製品いいですよ〜発売と同時に大人気で〜』などと笑顔でセールスをしているときは、頭の片隅にも残っていなかった。

好きではない女でも俺の子を宿し、そして一人で堕胎しに行く女がいるのに俺はいつもと変わらぬ心情で物を売り、同僚と馬鹿話をしながら大笑いをする。

そんな自分をまた冷静に分析している俺がいる。

お前には人間の心がないのか

それでも俺は悲しみや哀れみと言った負の感情が出てこない。

あるのはどうやってこの先金を返しどうやってこの女と別れるか、と問題に対しての悩みぐらいだった。

とりあえずその後一ヶ月ほどして裕美とは別れた、と言うより俺には彼女がいると言って強引に捨てたんだが、裕美のその後は知らない。

もともと縁があったわけでもないから噂も聞かない。

俺はと言えばその時の彼女とできちゃった結婚。

もうすぐ子供が生まれる。

彼女に妊娠を告げられたとき、嬉しさはあったものの、それ以上にそういえばあのときの子供は・・・と思い返すことのほうが多くなっていた。

男だったのか女だったのか、それすら聞かないまま俺は裕美を捨てたんだった。

そう、自分の都合の悪いことはすべて隠して、本名さえ教えないまま


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